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「どうしても生きてる」あらすじと感想・考察を紹介!【朝井リョウ】おすすめの小説レビュー

この記事は、朝井リョウさんの「どうしても生きてる」の各編ごとのあらすじを紹介します。
後半では、感想や「東海オンエア」がモデルになっているの?という考察ををお伝えします。

この本は、一見うまく社会生活を送れているようで、誰にも言えない傷や悩み、葛藤を抱えながらも生き抜く人々姿を描いた、全6編の短編集です。

実際に読んでみて、小説の中の出来事ではない「リアルな現実」を目の当たりにさせられました。
「重い」「しんどい」というレビューが多いのにも納得です。

一方で、最後には「自分でコントロールできないどうにもならないことに、折り合いをつけて生きていくしかない」という、
諦めの中の確かな強いメッセージを受け取ったように感じます。

登場人物は各編で異なるので、1編ずつ読み進めることも可能です。

「どうしても生きてる」は、次のような人にお勧めです。

  • 現実の「生きづらさ」を受け止めたい人
  • 朝井リョウさんの繊細かつ圧巻の心理描写にふれたい人

「どうしても生きてる」目次

「どうしても生きてる」の目次は次の通りです。全6編の短編集です。

  • 健やかな論理
  • 流転
  • 七分二十四秒目へ
  • 風が吹いたとて
  • そんなの痛いに決まってる

「どうしても生きてる」あらすじ:各編ごとに紹介

「どうしても生きてる」の各編のあらすじを、特に印象的だったフレーズと共に紹介します※ネタバレあり

「どうしても生きてる」は、主人公の年齢が、30代〜40代ということが全編で共通しています

『健やかな論理』

夫と離婚した佑季子は年下の彼氏と付き合い始める。

「離婚を申し込まれたから、かわいそう。」
「満たされていないから、クレームを言う。」

「〇〇だから××」という単純な因果関係に押し込められた『健やかな論理』は、
まるで「正しいのは自分」と主張するように自分と他者を分断する。

佑季子はそんな『健やかな論理』を気持ち悪いと感じている。

そんな佑季子が唯一安心感を得られるのは…?

初めて死亡者のアカウントを特定できたときに感じたのは、自分でも驚くくらいの安心感だった。

人がいなくなることに前触れなんて何もない、という、健やかさからかけ離れた論理を視覚的に実感できたとき、いつだってずっと少しだけ死にたいような自分に温かい毛布を被せてもらえたような気分になった。

朝井リョウ「どうしても生きている 健やかな論理」

流転

豊川は大学時代に友人の瀬古と漫画投稿を描き始め、新人賞を獲得する。

連載はうまくいかず、自分の中の「リアル、熱、切実さ、本音、嘘のなさ」を元に考える豊川のストーリは編集担当からいつまでもOKが出ない。
そんな時、瀬古だけが自分に内緒でイラストの仕事を受けていることを知った豊川は瀬古と喧嘩になり決別してしまう。

同じタイミングで、豊川の恋人の妊娠が分かり、結婚して妻と子を支えるため、豊川は漫画を辞めて保険会社に入社することを決意した。
流産になったことをきっかけに、妻との関係も崩れていく。

営業の仕事に邁進する豊川だが、胸が張れない仕事内容に辟易した会社の同期の明石の誘いで独立を準備する。
独立のために先に明石が辞表を出した日に、会社上層部に呼び出された豊川は、独立の計画が会社に勘繰られ先に手を打たれていることに気がつく。
豊川は、会社と明石のどちらを取るか決断を迫られる。

動揺した豊川はライブハウスに向かい、漫画を描き始めた20年前から変わらずに自分たちのスタイルを貫いているバンドの演奏を聞いて何を思う…?

自分は一体、どこに向かって立てば、生きることに対して後ろめたくなくいられるのだろうか。

築きかけた歴史を裏切ることを繰り返し、結局は何の技術も宿らなかったこの心と入れ物で、あと何十年も生きていくことができるだろうか。

朝井リョウ「どうしても生きている 流転」

七分二十四秒目へ

派遣社員の依里子は、新しく入った二十四歳の明日美の入れ替わりとして、もうすぐ雇用契約を切られる。

半年前、同じく派遣社員だった佳恵が退職する日に夜のラーメン屋で1人で見ていたのは、男性YouTuberグループ「トヨハシレンジャー」の動画だった。

退職日に、依里子は佳恵と同じように、男性YouTuberグループの動画を見ながらラーメンを1人でかきこむ。

女性として生きること、非正規雇用者として働くこと、結婚しない人生、子どもを持たない人生。平均年収の低下、介護問題、〜。

生きづらさ。生きづらさ。生きづらさ。

毎日どこに目を向けても、何かしらの情報が目に入る。生き抜くために大切なこと、必要な知識。今から備えておくべきたくさんのもの。

それらに触れるたび、生きていくことを諦めろ、そう言われている気分になる。

朝井リョウ「どうしても生きている 七分二十四秒目へ」

生きていくうえで何の意味もない、何のためにもならない情報に溺れているときだけ、息ができる。

朝井リョウ「どうしても生きている 七分二十四秒目へ」

風が吹いたとて

由布子の夫である義久は「出世コース」の品質管理の部署に異動して以来、痩せていく一方だ。
義久は、とにかくルールを守る人間で、娘の里奈がルールを破って修学旅行にスマホを持ち込んだとき、里奈に激怒した。

息子の貴之は、私立のサッカー強豪校から声がかかっている。
由布子が息子に内緒で試合を見に行った時に見たのは、審判の死角で相手チーム選手のユニフォームを掴むような強気なプレーだった。

由布子が働いているクリーニング業界は雲行きが怪しく、今度、誇大宣伝が採用されるらしい。

珍しく夫と2人きりの夕飯で、明らかになったのは、夫が異動した場所で不正を強いられいる事実だった。食卓に強い風が吹く

私は、スマホを持ち込むことも誰かのユニフォームを鷲掴むこともしない。
だけど、何もしないということで、誰かが破ったルールの上を、快適に歩いている。

それがいけないことだなんて知っている。気づいている。
でも、考えなければならないことでぎゅうぎゅうづめの明日が、すぐ目の前に迫っている。

朝井リョウ「どうしても生きている 風が吹いたとて」

そんなの痛いに決まってる

良大の働く会社は、勢いのある業界での中で業界トップにはなれず、勢いが落ちている。

一方、良大の妻は別の業界のトップの会社で働いており、いつの間にか収入も充実度も追い越されてしまった。

そんな時、前職でお世話になった上司・吉川の退職を知る。吉川は、難しい状況でも「大丈夫」と乗り切ってきた優秀な上司だった。
吉川の衝撃な退職理由とは…?

妻が仕事の日に、ありなと出かけたドライブで良大はありのままの自分をやっとさらけ出すことができる。

痛いときに痛いって、限界のときにもう限界だって、もう無理だって大きな声で言っても驚かない相手がひとりでもいる空間に、いたかったんだよ。

朝井リョウ「どうしても生きている そんなの痛いに決まっている」

小さい頃にみのりが引いたおみくじは小吉だったが、双子の健悟が引いたハズレ籤(くじ)「凶」と無理矢理交換させられた。

みのりは妊娠中である。みのりは幼い時に母を亡くし、妊娠や出産について尋ねることができず大きな不安がある。
昨日、胎児の出生前診断の結果が返ってきて、夫と喧嘩になった。
出生前診断で染色体異常が見つかる可能性は「二百四十九分の一」

演劇ホールのフロア長として働くみのりは、昨日アルバイトから休みたいと連絡が来たため、急遽休日出勤となる。
アルバイトからの急な連絡で、今回のような欠勤の連絡の確率は「二分の一」

体調も優れず、休日出勤した日に大地震が起きる。
みのりは自分の人生をどう捉えているのか…?

この世の中には、二種類の人間がいる。生きる世界が変わってしまったとき、自分を買えなくていい人。
その人のせいで、自分を変えなけらばならなくなる人。
そしてそれはきっと、知らないうちに知らないところで、決められてしまっている。

朝井リョウ「どうしても生きている 籤」

「どうしても生きている」感想

繊細でありのままを描き出す心理描写に圧倒されました。

普通に生活していると、この人(たちは)うまくいっていて悩みがないのでは?と錯覚してしまう時があります。
ですが、この本を読んで、「誰もが誰にも言えないような悩みや不安を何らか抱えているんだな」と感じました。

生まれてくる性別や家庭環境は選べない、雇用形態も年齢などの要因で自ら選べるわけではない。
身近な存在の才能や活躍を受け入れられない。
そんな「自分ではどうしようもないこと」がとても多く、「生きづらさ」を感じてしまう世界で、
逃げる、受け入れる、いずれにせよ自分なりに考えて「それでも生きるしかないと生きていくこと」に逞しさを感じました。

また、生きていく中で、自分の存在を受け入れてくれる「誰か」がいれば救われることについて、
「その「誰か」が自分にとってどんな関係であろうとも」という綺麗事ではない新しい視点に気がつけてよかったです。

心のままに泣いても喚いても驚かない人がひとりでもいれば、人は、生きていけるのかもしれない。
それが、誰にとっても誰でもない存在としてでしか向き合えない人であっても、それでも。

朝井リョウ「どうしても生きている そんなの痛いに決まっている」

「どうしても生きている」考察:東海オンエアがモデル?

「七分二十四秒目へ」に出てくる男性5人組YouTuber「トヨハシレンジャー」は東海オンエアがモデルかと予想されます。

本に出てくる「まんぷく堂」の店名も、動画のラーメン屋さん「まんぷく家」に似ていますね。

まとめ

この記事では、朝井リョウさんの「どうしても生きている」のあらすじ/感想・考察をお伝えしました。

現実の悩みや鬱屈がリアルに描かれているので「重い」「しんどい」と感じる部分もあるかもしれませんが、いろいろ考えさせられる一冊です。

ぜひ手に取ってみてください!

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